1998年1月22日、セガサターン用に発売されたチュンソフト制作のサウンドノベルシリーズ第3弾『街 ~運命の交差点~』は、実写映像とゲームが融合した革新的なアドベンチャーゲームだった。

ファミ通誌の特集記事でも「屈指の名作として語り継がれる実写サウンドノベル」と評価され、発売から四半世紀が過ぎた現在も熱狂的なファンを生み出し続けている。

本稿では、死ぬまでゲーマーでいたい!という視点から、本作の歴史やシステム、シナリオの魅力を語り尽くし、なぜ伝説的作品となったのかを改めて解き明かしていきたい。

さらに、現在制作中の精神的続編『シブヤスクランブルストーリーズ』の情報にも触れ、未来への期待を共有する。


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サウンドノベルに革新をもたらした実写作品

チュンソフトのサウンドノベルシリーズは『弟切草』、『かまいたちの夜』に続き、本作で初めて実写映像を採用した。

『弟切草』『かまいたちの夜』はSFCをプラットフォームに発売(後にPSなどに移植される)され、SFCから見れば次世代機であるSSで発売された街は今まで抽象的なイラストを背景に利用していたサウンドノベルから、一気にレベルアップして有名俳優陣も多く出演する完全実写映像(一部イラストアニメ調のシナリオがあるがオマケである)に一気に表現がレベルアップしたのだ。

当時は実写ゲームにネガティブな印象を持つプレイヤーも多かったが、4Gamerによる回顧記事では「『街』は実写ゲームのイメージを大きく変えた」と評価されている。

実際、筆者も実写についてはアレルギーがある人間であったが、この作品はむしろ実写でなければならないというレベルでの作品であることを実感するに至ったタイトルである。

実際の役者が演じることで、渋谷の街に生きる人々の表情や息遣いがリアルに伝わり、まるでドラマを操作しているような臨場感が味わえる。

登場する俳優陣も豪華で、ダンカン、団時朗、北陽の伊藤さおり、窪塚洋介、谷山紀章など、今となっては名の知れた面々が揃っている。

ファミ通の記事でも、当時若手だった窪塚洋介やお笑いコンビ北陽の伊藤さおりが出演していたことが紹介されている。

『街』が革新的だったのは実写だけではない。

プレイヤーは8人の主人公たちが同じ渋谷の5日間を体験する群像劇を、ザッピングと呼ばれるシステムで行き来しながら読み進める。

ファミ通の記事は、8本のシナリオが複雑に絡み合い、主人公たちの行動が他のシナリオに影響を与える点こそ本作の醍醐味だと述べている電撃オンラインでも、主人公を切り替えながら他の主人公の行動を調整することの奥深さに触れ、「神さながらに主人公たちの運命を動かしていく」と表現している。

現実世界では、我々が認知することは出来ないが、もし高次元の3次元を俯瞰できる神の視点があるとすれば、この街で起こっていることよりももっと複雑怪奇で面白い、それぞれの人々の人生の相互作用があるのだろうなと思わされる作品であった。

物語中に登場する専門用語や裏設定を解説するTIPSの存在も重要だ。ファミ通は「文章の注釈が“TIP”の形式で解説されており、登場人物たちの掘り下げに役立った」と評価。

電撃オンラインの記事では、TIPとして示される「パチンコ男」のエピソードが、本作が伝えたいテーマ――「誰もが主役であり誰もが脇役」であること――を象徴していると指摘している。

TIPSを読むことで登場人物それぞれの人生への理解が深まり、群像劇の厚みが増す。

ゲームシステムの妙:ザッピングと膨大なバッドエンド

『街』のゲームプレイは、シンプルなノベルゲームの枠を超える緊張感に満ちている。

プレイヤーはタイムライン上に配置された8人の主人公のシナリオを「ザッピング」操作で切り替え、シナリオごとの選択肢を調整することで他の主人公の物語に干渉する。

電撃オンラインは、「ある主人公を操作していると別の主人公の行動が妨げとなって先に進めなくなるため、別の主人公を操作して障害を取り除く必要がある」と解説している。

このシステムのおかげで、単なる紙芝居にとどまらないパズル的な面白さと、全キャラクターに命を吹き込む群像劇の緊張感が両立している。

重要な選択を誤ると、他の主人公の運命に連鎖してバッドエンドへ突き落とされる。

このバッドエンドのバリエーションは膨大で、4Gamerの回顧記事でも「バッドエンドにもさまざまな種類があり、すべての結末が見たくなってしまう」と評されている。

PS版およびPSP版では難易度選択が追加され、HARDではバッドエンドの数が増えると4Gamerが解説している。一般サイトのユーザーレビューでも「バッドエンド自体は面白いが数が非常に多いので探し回るのが苦痛」と言及しており、それほど豊富なバリエーションがあることの裏返しでもある。

バッドエンドを回避して物語を進めるたびに、自身の選択が渋谷の人々の運命を大きく変えることを痛感し、まるで神のような全能感と責任感を味わえる。

PS版ではザッピングに加えて難易度設定とシルエットモードが追加され、初心者にも遊びやすくなった。

4Gamerによれば、PS版はEASY/NORMAL/HARDの難易度選択があり、HARDはバッドエンドの数が多くヒントも少ないが、EASYはバッドエンドが少なく進行しやすい。

移動マップや分岐アイコンにより現在位置と時間がわかりやすく可視化され、ストーリーを進めやすくした。

また、実写映像が苦手な人向けにシルエットモードも搭載され、キャラクターをシルエット表示に切り替えられる。

PSP版ではサギ山篇とパトリック・ダンディ篇の秘蔵シナリオが追加され、携帯機でどこでもプレイできる利点がある。

8人の主人公と多彩なシナリオ

本作の物語は8人の主人公の5日間を描いた群像劇だ。各シナリオはジャンルも雰囲気も異なり、コメディからハードボイルド、SF、ラブストーリー、サイコホラーまで揃っている。ここでは主要なシナリオを簡単に紹介し、私自身の感想を交えていきたい。

1. オタク刑事走る! ― 雨宮桂馬編

自称ゲーマー刑事の雨宮桂馬が渋谷を駆け回り、爆破予告の犯人を追うシナリオ。とあるユーザーレビューでは、「内容は刑事ものの王道。雨宮のキャラが良かったが、バッドエンドの多くが渋谷が爆発する内容なのはいかがなものか」と記されている。私自身も、雨宮がゲーム好きという設定に親近感を覚えながらも、渋谷の街を守ろうと奔走する姿に胸が熱くなった。バッドエンドで何度も渋谷が爆発するのはシュールだが、その緊張感が逆にコミカルさを引き立てている。

2. The WRONG MAN ― 牛尾政美編&馬部甚太郎編

元ヤクザの牛尾政美と売れない役者・馬部甚太郎が互いに容姿がそっくりであることから人生を入れ替えられ、ヤクザと役者の役割を演じる羽目になる。4Gamerが「実写ならではの役者の表情豊かな演技が支持された」と評するように、松田勝演じる牛と馬の二役は表情や雰囲気の違いが見事で、滑稽な状況なのに妙なリアリティがある。レビューサイトでは「誰も別人だと気づいてくれないのが可哀想」、「牛よりも常に殺される可能性があり可哀想」といった意見もあったが、その理不尽さこそが『街』らしさ。笑いとスリルが同居し、選択肢によって二人が出会うかどうかが他の主人公の運命を左右する仕掛けに唸らされた。なお、このシナリオだけ作中3日でストーリーが完結するようになっている。

3. やせるおもい ― 細井美子編

恋人に「5日間で17kg痩せなければ別れる」と言われたヒロインがダイエットに奮闘するコメディ。レビューでは「バッドエンドも笑える内容が多く、宇宙人が襲来するなどとんでもない展開もある」と紹介されている。実写映像で描かれるブラックなコメディは、当時の渋谷の空気感が滲み出ていて、ダイエットに苦しむ美子の表情に思わず感情移入してしまった。お笑い芸人の北陽の伊藤さおりとしてブレイクする前の実写出演であり、貴重なシナリオと言えるかも知れない。

4. 七曜会 ― 篠田正志編

就職内定を取り消され、謎の組織「七曜会」に入会させられる大学生の物語。とあるユーザーレビューでは「最初は面白かったが進むにつれてつまらなくなり、最後のオチは『何じゃこりゃ?』という感じ」と評価が分かれている。確かに陰謀の規模のわりに終盤があっけなく、肩透かしを感じる部分もあった。しかし日曜日や水曜日と名乗る女性の妖しい魅力は、4Gamerが「プレイヤー人気も高かった」と回顧するほど強烈で、私も彼女たちに翻弄されながら彼らの正体を考察するのが楽しかった。

5. 迷える外人部隊 ― 高峰隆士編

フランス外人部隊から脱走して帰国した高峰隆士の孤独な彷徨を描く。レビューでは「全体的に暗い内容で、馴染めず孤独にさ迷う雰囲気が哀愁を誘う。ラストも悲しいが個人的には一番好き」と評されている。このシナリオはハードボイルドな演出と哀愁漂うBGMが見事に噛み合い、異質な人間が渋谷で迷子になる姿が切なくも美しい。実写ならではの渋谷の風景が強く印象に残った。なお、隠しシナリオまでプレイすると隆士が実質、街という作品の主役であると言えるのだが、ネタバレ回避のため深くは語らない。

6. シュレディンガーの手 ― 市川文靖編

売れっ子シナリオライターが、睡眠中に自分の手が勝手に作品を書くという奇怪な現象に悩まされる心理ホラー。「全体的に暗く、バッドエンドも精神崩壊や殺人を犯す陰湿な内容が多い」と指摘するレビューがある。私もこのシナリオをプレイしているとき、主人公の精神がじわじわ壊れていく感覚にぞっとした。ホラーの表現に実写が絶妙にマッチし、サウンドノベルならではの心理的恐怖を存分に味わえる。

7. で・き・ちゃっ・た ― 飛沢陽平編

学園の人気者で女好きの高校生が複数の女性と関係を持ち、妊娠騒動に巻き込まれる青春劇。レビューでは「多数の女の子と付き合っているとこんなに苦労することがわかる」と皮肉られているが、陽平がとにかくダメ男すぎて逆に憎めない。バッドエンドの中には男色エンドまで用意されており、当時の表現規制ギリギリを攻める作りに驚かされた。

8. 花火/青ムシ抄 ― 隠しシナリオ

PSP版で追加された花火編では高峰隆士の父・厚士の視点から息子への想いが描かれ、短いながら涙を誘う。青ムシ抄はアニメ絵で描かれた特異なシナリオで、多くのアニメのパロディを詰め込んだ勢い任せの展開の中に悲惨な結末が待っている。この振り幅こそ『街』の懐の深さであり、隠しシナリオまで含めると十数本のドラマを味わえる。花火までプレイすることで、街の全てを把握できる。プレイするなら絶対ここまでプレイするべきだ。

音楽と演出:実写とサウンドが織り成すドラマ

『街』のBGMはシナリオごとに印象的な旋律が用意されている。「隠しシナリオの花火で流れた曲が非常に良かった」と褒め、高峰隆士のシナリオで流れるサックス曲も印象深いと指摘している。また実写ムービーの挿入タイミングや効果音も秀逸で、電撃オンラインが「実写でしか味わえない臨場感や表情から感情を読み取る繊細なおもしろさが根強いファンを生み出した」と述べている。サウンドと映像が一体となり、渋谷の雑踏や登場人物の心の揺らぎを豊かに表現している。隠しシナリオの楽曲は、個人的にも好きで時々聴きたくなる。

リメイクと移植による広がり

『街』は1998年のセガサターン版発売後、翌年にPlayStation版『街 ~運命の交差点~』として移植された。

PS版では難易度設定・シルエットモード・移動マップなどが追加され、多くのプレイヤーが本作に触れるきっかけとなった。

電撃オンラインも「PS版ではシルエットモードが搭載され、さらに多くのプレイヤーが感動を味わった」と述べている。

2005年には携帯アプリ版が登場し、サウンドノベルというジャンルがガラケーでも楽しめることを示した。

2006年のPSP版『特別篇』ではサギ山篇とパトリック・ダンディ篇が追加され、4Gamerは「どこでもプレイできることが据え置き機にはない大きなメリット」と評価している。

ただ現在では、入手方法は限られており、プレイする環境を揃えるのが大変であることは残念ではある。

シブヤスクランブルストーリーのリリースとともに、スイッチ2などに街や428が移植されることをあわよくば期待したいところだ。

伝説的作品となった理由

なぜ『街 ~運命の交差点~』はこれほどまでに語り継がれるのか。

その理由は、実写とゲームの融合による圧倒的な臨場感群像劇をゲームとして成立させたザッピングシステムTIPSによる世界観の深掘り、そしてジャンルを超えたシナリオの豊富さにある。

4Gamerは「役者の表情豊かな演技と質の高いシナリオが絶妙に噛み合うことで多くの人に支持された」とまとめ、電撃オンラインは実写ならではの臨場感がファンを生み出したと評している。

ファミ通の記事も「名作・傑作として広く知られており、影響を受けたクリエイターや作品も少なくない」と評価し、ゲーム史に残る一作であることを示している。

さらに、『街』は時間が経っても色褪せない。

4Gamerは「時間の経過によって色褪せるタイプのゲームではなく、時が経つにつれポテンシャルの凄さを実感してしまう」と述べ、電撃オンラインも「渋谷の風景は変わってもゲーム内容はまったく色あせていない」と強調している。

実写で切り取られた90年代末の渋谷は資料的価値も高く、現在の渋谷と見比べる楽しさもある。

そして何より、プレイヤーそれぞれが自分の物語と他人の物語が交差する瞬間を体験できるゲーム体験が唯一無二だ。

TIPSの「パチンコ男」が示すように、誰もが主役であり同時に脇役であるというテーマは、私自身の人生観にも影響を与えた。

ゲーム内で他人の選択が自分の運命に影響するように、現実でも小さな選択や偶然が誰かの人生を変える。『街』はそんな現実の不思議さをゲームという形で体験させてくれる。

精神的続編『シブヤスクランブルストーリーズ』への期待

『街』の正式な続編はこれまで発売されていないが、2025年にイシイジロウ総監督と北島行徳脚本家による新プロジェクト『シブヤスクランブルストーリーズ』が発表され、ファミ通の新情報発表会レポートが話題となった。

プロジェクトは2025年5月28日に目標金額500万円でクラウドファンディングを開始し、3522人の支援者によって目標の1000%超となる5475万4878円の支援金を集めた。(しかし半分ほどがうぶごえによって持ち逃げされてしまったと思われる)

発表会では5人のメインキャストが公開され、渋谷を舞台にした新たな実写アドベンチャーとして、本作のティザームービーやメインテーマがお披露目された。

イシイ総監督は会場で、「『シブヤスクランブルストーリーズ』は『428 〜封鎖された渋谷で〜』や『街 ~運命の交差点~』の続編ではないが、これらの作品がファンに与えた感動をもう一度再現できるようスタッフとキャストが同じ想いで頑張っている」と語り、過去作とはつながっていないからこその自由な表現に期待してほしいと述べた。

窪塚洋介もビデオメッセージで「20数年前、渋谷を舞台にしたサウンドノベル『街 ~運命の交差点~』に出演した。

今作は続編ではないが、あのとき我々が渋谷に刻んだものが時を経て形を変え、新しい物語として立ち上がることに興奮している」とコメントし、作品が完成するのは2028年を予定していると明かした。

この新プロジェクトにより、『街』の魂が再び渋谷を駆け巡る日が近づいている。

キャストには窪塚洋介のほか、天野浩成や北上史欧などが名を連ね、クラウドファンディングで多くのファンが制作に参加できる点も画期的だ。

『街』が示した群像劇と実写映像の可能性を、どのような形で令和の渋谷に蘇らせるのか。死ぬまでゲーマーでいたい私にとって、新たな歴史の証人になる瞬間が今から待ち遠しい。

プレイヤーとしての熱い思い

最後に、一人のゲーマーとして『街 ~運命の交差点~』の魅力を語り尽くしたい。

初めてプレイしたとき、8つの物語が絶妙に絡み合い、些細な選択が他者の運命に影響することに胸が高鳴った。

雨宮が犯人を追う裏で、牛尾や馬部が自分の人生を演じ、篠田が謎の組織に翻弄され、隆士が孤独に迷い、美子が泣き笑いし、市川が精神の崩壊に怯える。

全員が渋谷という舞台ですれ違いながらも互いの物語に干渉しあう様は、ゲームの枠を超えたヒューマンドラマだった。

私は東京に遊びに行った時に渋谷のスクランブル交差点で何度も立ち止まり、ここが街の舞台なんだ…と、ゲームのシーンを思い出した。

リアルなロケーションに実写映像が重なることで、現実の街を歩いていても『街』の登場人物がどこかにいるような錯覚に陥る。

TIPSを読み込んで登場人物の背景を調べたり、バッドエンドをコンプリートするために何時間もリトライしたり、PSP版を持ってカフェで延々とプレイしたこともある。

難度HARDでバッドエンドの嵐に苦しんだのも今では良い思い出だ。

『街』は決して万人向けのゲームではないかもしれない。

実写という試みは今でも好みが分かれるし、膨大なバッドエンドや複雑なザッピングに疲れる人もいるだろう。しかし、これほど重層的で奥深く、笑いと涙と恐怖が同居するゲームは他にない。

ファミ通が「名作・傑作として広く知られている」と評し、4Gamerが「時が経つほど凄さを実感する」と述べ、電撃オンラインが「実写の臨場感が根強いファンを生み出した」と伝えるのも頷ける。

20年以上前の渋谷の風景と、人間の滑稽さや哀しさ、選択の重みを味わえる貴重な作品だ。既にプレイ済みのファンは、今一度あの群像劇に飛び込んで懐かしさと新たな発見を楽しんでほしい。

そして2028年には、『シブヤスクランブルストーリーズ』で再び渋谷の物語が交差する。その日まで私はゲーマーであり続け、何度でも『街』を歩き直すだろう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたも渋谷のスクランブル交差点を舞台にしたこの伝説的サウンドノベルに飛び込み、運命の糸を手繰り寄せてみてはいかがだろうか。