2022年秋アニメとして、1クールの放送がされたオリジナルアニメである

Do It Yourself!!-どぅー・いっと・ゆあせるふ-




このアニメを見るに至ったきっかけは、今年の冒頭に記事を書かせていただいたわけだが

今回は、具体的なレビューと言うか、まぁ管理人の思ったことを書いていきたいという話である。

完全にこのブログの趣旨から外れる記事ではあるのが、寛大な目で見ていただければ幸いである。


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実は人生そのものの概念・Do It Yourself。

前回の記事は長々と、このアニメを視るに至ったきっかけを書いてきたが

ここからいよいよ、Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-というアニメについて語っていきたいと思う。


まずDo It Yourselfという単語であるが、この単語は日本でもお馴染みな単語の一つと言えるだろう。

一番見るのはやはりホームセンターだろうか。DIY(頭文字の省略でこちらも一般的な言い回し)という

コーナーがだいたいホームセンターでは設置されており、そこに売っているのは主に

日曜大工で使うような電動ドリルやドライバーなどの商品である。

今回のDo It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-も、このタイトルどおり

女子高生×DIYという部活モノアニメとなっており、広義では日常系アニメに分類される。

言葉悪く言えば、題材的には非常に地味である。

それ故、新潟県三条市が舞台になっているということから見始めたものの

アニメとしての出来の期待値は、個人的には最初はそんなに高くなかった。

しかし、全12話を見終わった今となっては、なんと素晴らしいアニメを制作してくれたのか!

と、制作会社、スタッフ、サポーターの三条市・高儀に感謝している。

それはまたおいおい書いていくとして、DIYという言葉についてもう少し触れておこう。


先に書いたとおり、現在の日本でのDIYという言葉は日曜大工的な

一般の人が何かしらのモノを自分で作る行為…と捉えられているものだろう。

海外での解釈は正確には知らないが、かんたんに調べる限りは同じような解釈のようだ。


DIY、直訳すれば『自分でやりなさい』という、やや突き放した言葉であるが

これは拡大解釈すれば、人生そのものと言える概念でもないだろうか。

人間は生きていく上で、最終的には誰もが孤独である。

自分の感情や痛み、そして死に至るまでの自覚しているものは他人と共有することは一切できない。

究極的に、自分のことはすべて自分でやるしかなく、それ故DIYとは人生そのもの…と言ったら大げさだろうか。


このことを暗に示唆しているのが、この作品のとあるワンシーンにあって、それは第5話の最後で

登場人物の一人で、東南アジア系の何やらいいとこのお嬢さんであるっぽい

幸希心こと、しーというキャラクターが

つぶやく一言である『居場所だってDIYにゃ』というセリフにあると思っている。

これは、海外からの留学生?と思われるしーが、世界で最先端の技術を教える

湯々女子高等専門学校での生活より、面白そうだからという理由で参加した

潟々女子高等学校のDIY部に、外部部員として認められたときにつぶやいた言葉。

最先端のテクノロジーを学ぶことは、彼女にとってはあまり楽しくないものだったようで

幸希心…そのまま音読みで読めば、こうきしん=好奇心となる彼女にとっては

なにか自分の手作業でものを生み出すことが楽しかった…という話なのだと思う。

彼女が良いところのお嬢さんであること、また湯々女子高等専門学校のセキュリティをハッキングして

無効化させてしまうなど、スペックは申し分ないので、おそらく湯々女子高等専門学校に

彼女が留学したのは、本人の希望というよりは親がそのように取り計らったのではないかと思われる。

今まで親の敷いたレールに沿って過ごしてきた、しーが自分の意思で最先端のテクノロジーではなく

アナログな手作業でのDIYに心惹かれ、潟々女子高等学校DIY部に所属できたことが

嬉しくて、最後の居場所だってDIYにゃというセリフにつながったのだろう。

これは余談だが、このアニメについてはあまり多くを説明するタイプのアニメではなく

(DIYの描写は丁寧だが、キャラクターの背景については視聴者の想像に任せる部分が多い)

この作品の捉え方も、視聴者によってそれぞれDIYしていくものなのかもしれない。

DIYでありながら、人のつながりもまた切っても切れないことを示唆するDo It Yourself!!

前段から矛盾することかもしれないが人生の全てがDIYであることと同時に、またこれも一つの真実として

人は一人では絶対に生きられないことが挙げられる。

人間が生きているのは、自分一人の力では絶対なく、他の誰かが創造しているもの

維持しているものによって人は生かされているのである。

時々、自分は自分だけの力で生きてきたというような物言いを聞くことがあるが厳密には間違いだ。

その生きるための家を作った人がいる。生きるために必要な食物を作った人がいる。

屁理屈かもしれないが、現代生活を生きる以上、自分で何もかもやれるということは絶対に無く

誰かがやったことが自分を生かしているというのは、山のようにあるのである。

もちろん、自分がやっていることがまた他の誰かを生かしてもいるのも真理である。

強いて言えば、山奥で全てのものを自給自足で作っていれば一人で生きていると言えなくはないだろうが

それとて、口に入れる食物であったり生命維持に必要な水や酸素は人間が無から作り出せるものではない。

だから、この地球に生きているのは全ての生物が運命共同体であり、生きとし生けるもの全てが

他の何かしらの影響を受けている以上、厳密には一人で生きているという状況は生まれ得ないということである。

非常に理屈っぽい考え方もしれないが、結局人生をDIYをするにも、また別の誰かの助けがいるということ。

この作品はまた、その考えも尊重しているところが至るところにあり、例えば

秘密基地と作中内で言われる、最終目標・ツリーハウスを作るときに

TAB(Treehouse Attachment Bolt)という

木の上に家を作る際の土台になるボルトを、部室の前の樹に打ち込むというシーンがあるのだが

この作業が高所作業で危険を伴うため、DIY部員ではなく、作中DIY部の部長であり

実家がワクワクワンワンというホームセンターを経営する、矢差暮礼(くれい)

両親に頼んで、このTABを打ち込む作業(身体能力が高いしーが補佐的に命綱をつけて作業をサポート)を

してもらうシーンであったり、9話最後でせっかく集めたツリーハウス作りのための材料が

連絡ミスで、全て回収されてしまったときに、素材集めをDIY部員で再度行うことになるものの

それだけでは無理があると悟った、顧問である法華津治子先生(ほけつはるこ)が

DIY部OGに素材を融通してもらうために、トラックでひと晩中走り回ったなどの描写がある。

この手のアニメは、主人公たちが基本的に万能超人になりがちなのだが、自分たちでできないことについては

助けることのできる大人に頼ったりして、一人の力では限界があっても複数人で

助け合っていくことで、どんな困難でも打開していけるという、人生の真理を描いているのが好印象である。

そういう意味では、主人公であり超がつくほどの不器用である結愛せるふ(ゆあせるふ)が

万能超人化しなかったのは、本当に良い判断だったと個人的に思っている。

不器用なせるふは、初めて使った電動ドライバーを暴走させてしまったり、釘が真っ直ぐに打てなかったり

豚小屋(J・三代目・ソウル・ミートという飼い豚がせるふ家にいる)を作ろうと自分で

用意した材料の大きさが揃っていなかったりと、DIY面では部員の中では一番工作ができなかった。

しかし、空想力とそれを形にする絵の才能がずば抜けており、主にせるふの才能はそちらの方面で発揮される。

彼女の幼馴染で、せるふのことを最も知る須理出未来(すりでみく)も彼女の

できない部分ではなく、ずば抜けている部分を活かすべき。できないところは他の人に任せればいい

というようなことを発言しており、やはりここでもあくまで出来ないことは無理してやることはなく

できる人に助けを求める、いわば適材適所の助け合いが大切であることを暗に示している。

最終話で、ツリーハウス完成直前で、最後のネジを電動ドライバーで締めさせることを

部長はせるふに命じ、せるふは最後のその大役を立派に果たし切る。

できる人にとっては、何でもないネジ締めすらも最初は出来なかったせるふが最後の最後で行うことで

彼女はできる範囲での成長をしているということが視聴者に訴えられるわけで

それまでの11話を視てきた人であれば、せるふ成長したな…と感慨深くなること必至な演出である。

ただのネジ締めのシーンなのだが、上記のように多くの意図が含まれているのではないかと個人的には考えている。

人が一人で出来ることには所詮限界があり、出来ないことは出来る人に助けを求めていいということを

全肯定するのが、このDo It Yourself!!という作品なのである。

タイトルの意味は自分でやりなさいという意味ながら、実際は人は周囲の人によって生かされている…

この、人生においての普遍的な真理を愚直に当たり前のように描いているからこそ、このアニメに多くの人が惹かれるのかもしれない。