市場が突きつける「グラフィック至上主義」への疑問
「高精細なグラフィックに熱狂するのは、40代、50代の限られたゲーマーだけだ」─Square Enixの元エグゼクティブJacob Navokのこの指摘は、業界が直面する世代間ギャップを鋭く突いている。実際、若年層の多くはMinecraft、Roblox、Fortniteといった、必ずしもグラフィックの革新性を追求しないゲームに魅了されている。
うん。もうなんというか、ゲーム業界をそれなりに追っている人なら皆知ってたという話ですよね。
グラフィックに熱狂して、それだけでゲームを選ぶ基準にするのであれば、PS5やXboxのゲームにもっと
人が集まっていることでしょうし、任天堂のタイトルの売れ行きはもう少し鈍いという状況になるでしょう。
しかし、結果としてはグラフィックはゲームの見栄えとしてだけの価値にはなるもので
その圧倒的表現力がゲームの面白さを倍増させるかと言えば、ほぼそうではないというのが
今までリリースされてきたゲームでヒットしたものを見れば、答えとして出ているわけです。
結局、いくら実写に近い圧倒的美麗グラフィックとか言われても、最終的には実写の映画には敵わないわけです。
ましてや、CGなどの技術も発達している今、実写映画でもファンタジー世界を再現することは
昔に比べて圧倒的に容易にできるようになりましたし、ゲームで美麗グラフィックを誇るのは
この手の技術が発達した現代となっては、相当なお金をかけなければ他社より抜きんでたものは作れないのです。
そして、記事内にもあるように巨額の費用を投じたとて、そのゲームが実際にその投資分に見合うだけの
売れ行きを見せるかは未知数であり、上記引用記事内では1100万本全世界で売れたとしても、開発費が3億ドルで
結局は、開発終了後に開発スタジオの大規模人員整理をしなければいけなかったという結果が物語っていると言えましょう。
グラフィックの美醜に極端にこだわるゲーマーを、ゲハ界隈では『グラガグラガ』と揶揄するような表現がありますが
実際に、グラガグラガをしているのはスクエニの元幹部が言うように、ファミコン時代からゲームに触れて
ゲームハードの進化をほぼすべて体験してきたユーザー層が、特にその傾向があるということなのかと思います。
自分も実際、PSのFF7のムービーは驚愕しましたし、ゲームハードの進化を強く感じた記憶は残っていますからね。
でも、何度か見ているともう見慣れてしまって、よほどすごいもの以外は特に何も感じなくなってしまうのですよね。
ただ、もうここまで行くと巨額のお金をかけても、他社より抜きんでているとはいっても、他近い
技術力と資本力を持つメーカーとの圧倒的な差というのは、ほぼつけられないでしょうし
また、開発費もそれだけ高騰するのであれば、作れば作るほどメーカーにダメージが行くということになります。
かつて、組長こと任天堂の山内社長は、際限なく上がっていく開発費高騰に対しての警鐘を鳴らしていましたが
その忠告を聞かず、大作至上主義に走ったメーカーの末路は、目も当てられない状況になっています。
今後、この悪循環からメーカーが抜け出すのは至難の業と言え、血を吐きながらゲーム開発をするという
方針転換ができないメーカーにとっては、厳しい未来が今のままだと待っているのは確定と言えます。