Switch版『空の軌跡 the 1st リメイク』を、物語のラストまでプレイしました。

最初に伝えておきたいのは──これは“過去作の再現”ではなく、“RPGという文化の再定義”だということです。

結論から言えば、本作はRPGを愛するすべてのプレイヤーに胸を張って薦められる傑作

リメイク作品にありがちな懐古と現代化のギャップを、見事なバランスで乗り越えてきた。

ファルコムの開発陣が“あの頃の魂”を、令和の技術で蘇らせた――そう感じました。

長い歴史を誇る「軌跡シリーズ」。あまりにも多層的な世界観ゆえ、「どこから始めればいいのか分からない」と敬遠してきた人も多いでしょう。

けれども、今回の『空の軌跡 the 1st リメイク』は、シリーズの原点を完全リビルドした一本。

ここから始めても何ひとつ置いていかれない、まさに“最初の扉”としての理想形です。

プレイを進めるうちに、僕は何度も思いました。

――「昔のRPGは、こんなにも心を揺さぶる力を持っていたのか」と。

リメイクの域を超え、物語・演出・演技・テンポすべてが再設計されており、その完成度はシリーズファンの記憶を優しく更新してくれます。

そしてエンディングを迎えた今、僕の心にはただひとつの感情だけが残っています。「早く、続きを――」



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ゲーム概要とボリューム

作品概要

『空の軌跡 the 1st リメイク』は、日本ファルコムが手がける最新のロールプレイングゲーム。

対応機種はNintendo Switch、PS5、そしてPC

――つまり、どんな環境でもこの“再会の物語”に触れられるというわけです。

舞台となるのは、ゼムリア大陸南部の小国・リベール王国。緑豊かな自然と古き良き文化が息づくこの国で、人々の平和を守る“遊撃士(ブレイサー)”として生きる少女エステルと、その相棒ヨシュアの物語が始まります。

彼らの旅は、決して華やかな英雄譚ではありません。

小さな依頼から始まり、日常の延長線にある“誰かの困りごと”を解決していく中で、やがてリベール全土を揺るがす陰謀に巻き込まれていく――。

その構成の丁寧さと、ひとつひとつのエピソードが織り成す温もりには、思わず胸が熱くなります。

物語の軸となるのは、エステルが正式な遊撃士になるための修行、そして失踪した父親・カシウスの行方を追う旅。

ですが、実際にプレイしてみると、それ以上に心を掴むのは人と人との絆小さな勇気の積み重ねです。

リベールの空の下で繰り広げられるそのドラマは、ただの冒険譚ではなく、「誰かを想う力」がどれほど世界を変えるのかを静かに教えてくれます。

ボリューム感

ストーリーを最後まで追うのに必要なプレイ時間は、約40〜45時間

僕自身は、すべてのサブイベントを丁寧にこなし、寄り道を楽しみながら進めて約45時間強でエンディングを迎えました。

数字だけ見ると“中規模RPG”に分類されるかもしれません。

けれど、実際にプレイしてみると、その体感時間は不思議なほど短く感じます。テンポの良いシナリオ展開と、探索・戦闘・会話のリズムが絶妙に調和していて、「あと少しだけ…」が止まらないRPG

気づけば夜が更けていた、そんなタイプのゲームです。

また、リメイクにあたり周回プレイ(ニューゲームプラス)も強化。

お金や装備、クラフトポイントの引き継ぎはもちろん、敵レベルを+50まで引き上げるモードも実装。

「今度は本気で挑みたい」「あのボスを別の戦術で倒してみたい」――そんなプレイヤー心理をよく分かっている設計です。

これは単なる“長さ”ではなく、再び世界に戻りたくなる密度。ひとつの冒険を終えた後も、もう一度リベールの空を歩きたくなる──

そんな「余韻を残すボリューム感」こそが、このリメイク版の真価だと感じました。


主な特徴

  1. 現代の基準で再構築されたリベールの空
    2004年に誕生した『英雄伝説 空の軌跡』が、ついにフル3Dで息を吹き返しました。

    実際にプレイして感じたのは、単なるリマスターではなく“記憶の中の風景”を現代の感覚で再構築していること。

    街からフィールドへの移動は完全シームレスとなり、あの頃のリベールを“肌で歩く感覚”で追体験できます。

    光と影の描写、街並みの立体感、風が抜けるような空気感――ファルコムの技術と情熱が確かに詰まっています。

  2. 2つの戦闘スタイルが生む、新しいテンポと戦略性
    本作最大の革新点のひとつが、コマンドバトル」と「クイックバトルという2軸の戦闘システム。

    実際に両方を切り替えながら戦ってみると、従来のターン制の読み合いと、リアルタイムな緊張感が見事に融合していると感じました。

    • コマンドバトル: 行動順の管理、位置取り、クラフトやアーツの使い分け……そのひとつひとつが“詰将棋のような美しさ”。特に「ブレイブアタック」や「チェイン攻撃」は、敵のスタンを起点としたリズムの変化が気持ちよく、戦闘に没頭している自分を実感します。
    • クイックバトル: フィールド上からそのまま戦闘に突入。攻撃・回避・クラフトを即座に繰り出し、スタンさせてからコマンドへ接続する二段構えは、従来のテンポを一段階引き上げる設計です。

    どちらのモードも、単に“遊びやすい”だけでなく、「RPGの思考性」と「アクションの直感性」を両立させる挑戦。

    その実装の完成度は、今作最大の見どころと言えるでしょう。

  3. 快適さを追求したプレイサイクル
    ファストトラベルやハイスピードモードなどの時短要素も極めて洗練。

    探索や育成のテンポを自在にコントロールでき、素材集めやサブクエスト周回でも“作業感”が薄く、むしろ冒険のリズムを自分の手で奏でているような心地よさがあります。

    ファルコムがプレイヤーの時間と体験を尊重していることが伝わる設計です。


特に良かった点

1. 王道ながら先の読めない物語構成

各章ごとに異なる地方を訪れ、そこで出会う人々の物語を積み重ねていく構成は一見王道。

けれど、その一つひとつのエピソードがまるで「短編映画」のように緻密で、感情の起伏が自然に積み上がっていきます。

主人公のエステルとヨシュアは物語の軸でありながら、旅の先々で出会うキャラクターたちも確かな存在感。

どの章でも「この人が主役でもおかしくない」と思えるほど、脇役の描き込みが深い。

これがファルコムの物語設計の真骨頂です。

特に終盤の展開は見事。

ネタバレは避けますが、収束へ向かう中で次々と回収される伏線、その演出の抑揚――そして最後の衝撃。

エンディングの余韻と同時に「第2部への扉が開く瞬間」に心が震えました。

2. 戦略性が奥深い戦闘システム

クイックバトルで敵をスタンさせ、そこからコマンドバトルで“戦術を組み立てる”。

二段構えのテンポが非常に心地よく、RPGでありながらアクション的没入感も味わえます。

位置取りと行動順の読み合い、行動順ボーナス(CP回復や即時アーツ発動)などの設計が巧妙で、“一手の重み”を感じるバトルが常に展開されます。

ノーマル難易度でも手応えは十分。育成・配置・行動が噛み合って勝利した瞬間の快感は格別。

これは“ただの難易度”ではなく理解が報われる設計です。

3. やり込みがいのある育成要素

「レベル」「装備」「オーブメント」の3軸構成。

特にオーブメントは属性値の組み合わせで新アーツが解放され、キャラの役割が劇的に変化。

戦術パズルを解くような面白さがあり、最適解を探す時間そのものが幸福です。

  • レベル上げ: 一定レベル到達で固有アビリティ獲得。新戦術が開ける快感。
  • 装備: 武器・防具・アクセサリーでステータスと立ち回りが変化。ビルドの幅が広い。
  • オーブメント: スロットに属性を嵌めてアーツ習得・バフ付与。個性を活かす構築が勝利に直結。

4. 快適性を極めたゲームシステム

ファストトラベル マップ全体を即座に移動でき、ボタン+方向キーのショートカットで行きたい場所を一瞬で選択可能。UI設計が秀逸。

ハイスピードモード 戦闘・移動・会話のテンポを自在に加速。長い街道を進む場面では、まるで旅のリズムを自分で操っている感覚があり、物語の熱を保ったまま駆け抜けられます。


唯一気になった点

ゲームシステムやプレイフィールは驚くほど完成度が高く、RPGとしての“遊び”の部分で気になる箇所はほとんどありませんでした。

――それでも、ひとつだけ惜しいと感じたのは、メインストーリーのボイス実装が部分的であること

全体の3〜4割ほどの場面でボイスが入っておらず、特にストーリーの合間や街でのちょっとした会話は無音のテキスト進行が続きます。

2020年代のリメイク基準に慣れたプレイヤーからすると、“ここで声が欲しい”場面の静けさにわずかな違和感。

とりわけNPCにボイスがあるのに、主要キャラ側が無音というシーンは、没入感をわずかに削ぐ瞬間がありました。

次回作やアップデートでは「メインはフルボイス、サブは無音」といったメリハリ設計があると理想的だと感じます。

完成度が極めて高い今作において、唯一“惜しい”のはそこだけでした。


まとめ

本作『空の軌跡 the 1st リメイク』は、王道でありながらも予想を裏切る展開の連続戦略性とスピード感を両立した革新的な戦闘育成の奥深さ極限まで磨き抜かれた快適性が見事に噛み合った――まさに“令和のRPGリメイク”の理想形。

メイン一部のボイス未実装にはわずかな違和感があるものの、それを差し引いても完成度は揺るがず、シリーズ未経験者にも強く薦められる一本です。

オリジナルを知る人には“記憶の中のリベールとの再会”として、初めて触れる人には“古典RPGの感動を現代に体験できる一本”として、どちらの立場でも心に残る旅になるはず。

もし購入を迷っているなら、ぜひ体験版(約5〜8時間)を。物語の始まりだけでも、その丁寧な作りと温もりに驚くはずです。――その時、あなたもきっと気づく。「この再会に、泣いてしまう理由」を。


よくある質問(FAQ)

Q1. 『空の軌跡 the 1st リメイク』はオリジナル版を遊んでいなくても楽しめますか?

A1. はい、問題なく楽しめます。シリーズの“原点”を完全リメイクしており、導入が丁寧です。オリジナル未プレイでもストーリーの全体像を理解でき、初めての「軌跡」にも最適です。

Q2. Switch版とPS5版・PC版の違いはありますか?

A2. 基本的な内容やシステムは全機種で共通。携帯プレイ重視ならSwitch、解像度や据え置き没入感を重視するならPS5・PCがおすすめです。ロードも短く快適に遊べます。

Q3. 難易度は高いですか?RPG初心者でも遊べますか?

A3. “歯応えはあるが理不尽ではない”絶妙なバランス。クイックバトルやハイスピードモードの活用でテンポよく進められ、初心者にも遊びやすい設計です。

Q4. オリジナル版との違いや追加要素は何ですか?

A4. 3Dグラフィック化、二軸の戦闘システム、ボイス対応、UI再設計が主な違い。フィールドと街のシームレス化、クイックバトル導入など、現代基準の快適性が加わっています。

Q5. 体験版の内容はどこまで遊べますか?

A5. 序章から第1章の途中まで約5〜8時間プレイ可能。引き継ぎにも対応し、体験版のデータをそのまま製品版へ移行できます。