通常の音楽ジャンルからすれば、非常にニッチなジャンルと思われるゲーム音楽

通常のポップスですと、そのアーティストが作る曲を目当てにCDやデータを買ったりするわけで

当たり前といえば当たり前ですが、普通の音楽というのは作ったアーティストがフォーカスされます。


しかし、ゲーム音楽というのは、あくまでゲームというメインディッシュに

彩りをつけるものであり、ゲーム音楽という音楽は基本的に主役にはなりません。

音楽がメインとなっている、音ゲーというジャンルのゲームがありますが、

あれはあくまで、音楽を擬似的に演奏すると言ったところが出発点で、通常の

ゲーム音楽とは若干違うというか…。まぁ、音楽が主役なゲームなので、普通のゲーム音楽とは

やはり、立ち位置が違うのだと個人的には解釈しています。


つまり、ゲーム音楽はあくまで裏方に徹するのが仕事なので

メインに出張ってくることは殆どありません。ゲームとゲーム音楽の評価は

だいたいセットになっていて、稀に音楽だけは良いと評されるゲームもありますが

それは、ゲーム自体の存在感が希薄であったという、正直失敗作ということになるのでしょう。


というわけで、ゲーム音楽というのは基本的にニッチです。

なぜなら、ゲームが面白そうという理由でゲームを買う人は普通ですが

ゲーム音楽(あるいは担当している作曲家)が良いのでゲームを買おうと

いう判断をする人は、ほとんど居ないからです。


なので、ゲームサントラとかの販売がありますけれど基本的に売れません。

売れないので、販売側も数を作らないのでゲームサントラというのはレア化し易い傾向があります。

まぁこれは致し方が無いのです。ゲーム音楽はあくまで単体で鑑賞するというよりは

ゲームの印象的な場面とセットになって覚えられるものですから。

ゲーム好きなら必ず一つは、ゲーム場面と一致したゲーム音楽を思い浮かべられる音楽があることでしょう。


さて、ゲーム音楽の立ち位置はこれぐらいにして

今回は、そんなニッチなゲーム音楽というジャンルを

あえて手で演奏しよう…そんな試みを行っている人が世界中には一定数居ます。

そこで今日は、日本でゲーム音楽を演奏する集団ということで

NES BANDというバンドを紹介したいと思います。知らない人はぜひこの機会に知ってください。

多分、初めて聴いたときはびっくりすると思いますのでw


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ファミコン音源の3和音+ノイズを1パートずつ4人で合奏するNES BAND。

NES BANDは松澤健(愛称:マツケン先生)が立ち上げたバンドです。

もちろん、ホームページもあります。


NESとはこのブログでも何度か書いてますが、海外でのファミコンの名称の略称で

正確に書けばNintendo Entertainment Systemになります。

NES BANDは名前の通り、ファミコンの音楽を手弾きでキーボードで弾くというバンドです。

論より証拠、まずは演奏動画を一つ貼ってみるとしましょうか。



初見の人はびっくりしませんか?まんまファミコンの音ですよね?

そう。このNES BANDはファミコン実機から取った音源を使って

キーボードでファミコンの音そのまんまを弾くことが出来る

特殊な環境を構築しているのです!


ファミコンの音源について簡単に解説しましょう。

ファミコンで使われる音色は主に、三角波・矩形波と呼ばれる音があります。

矩形波が主に高音域を担当し、三角波が低音…すなわちベース音を担当します。(もちろんあくまで標準的な話で例外はいくつもあります)

三角波は2チャンネル、矩形波は1チャンネル鳴らすことができ、FC音源は

通常3和音で構成されるのです。そして、もう一音ドラム的な扱いで使えるノイズ系の音です。

つまり、ファミコンはどんなに頑張っても最大4音しか出せないんですね。(後期ROMではサンプリングを使えるDPCMもありますが)

音楽を少しでも意識して聴いている人なら、三和音というのが如何に少ないかわかりますね。

普通のPOPバンドでも、ボーカル・ギター・ベース・ドラムと4つの構成が主ですが

ギターとベースは和音をかき鳴らせますから、単音しか弾けないギターとベースで

バンドしていると思えば、なんとなく想像は付くと思います。

ちなみに、ゲームの効果音もこれらの内蔵音源で当然作成されているので

ファミコンゲームで効果音がなると、その効果音を鳴らしたチャンネルは

ミュートされてしまいます。ロックマンなどやるとロックバスターを発射するだけで

音楽が途切れた感じになるのは、体験すればすぐに分かることです。

今のゲーム機では、何十和音と出せますから、重厚な音楽を作れますね。

ただ、3和音は3和音で、音楽がシンプルになるので、すっと頭に入ってきやすいという

長所もあります。ファミコン時代からゲームやっている人は、ファミコンのゲーム音楽が

頭に残っている人も多いのではないかと思います。


さて、この解説も長くなってしまいましたが、NES BANDはマツケン先生を筆頭に

ファミコンの音楽を手で弾くという集団です。メンバーはそれぞれのチャンネルごとに

一人が割り当てられ、計4人で演奏します。1チャンネルの人のみ何回かメンバーが変わっています。


さて、先に書いた話ですと、それぞれのチャンネルを一人ひとりが弾く…。

すなわち、基本的に各々が弾くのは一音…単音のみということになります。

ピアノとかをやったことがあればわかると思いますが、単音を弾くのなんて

普通に考えれば簡単です。ピアノは和音がありますから、両手の指を駆使して

きれいな演奏をする技量が求められます。


だから、NES BANDの演奏は簡単だろう…と考えるのは甘いです。

実は、ファミコンは先に述べた制約があったことから、作曲家も苦肉の策を取ってまして

擬似的に音に厚みを出すために、高速アルペジオや高速ディレイ(音を遅らせる)といった

手法を使って、音の厚みを無理やり出すというやり方をしているのです。

言葉で説明するとわかりにくいので、その凄まじさがわかる演奏動画を一つ貼りましょう。



これはロックマン2メドレーという動画ですが、40秒あたりから始まる

ロックマン2のタイトル音楽の演奏をみてみてください。

画面下のキーボードが3チャンネル…すなわち、ベース部分を弾いているのですが

凄い弾き方になっているのがわかるかと思います。これは、先に書いた

高速ディレイ(ファミコンの機能自体にはない)を使って、鳴っているのは一音ながらもすぐに次の音を出すことによって

まるで複数の和音になっているかのような音の厚みを出しているということになります。

なので、下の3チャンネルパートが凄いことになってるんですね。これはなかなかの演奏技術が必要だと思います。


こういう観点から見ていくと、幾ら1チャンネルごととはいえ、ファミコンの音源を

手で弾くことが、実はかなり無謀なことであることがわかるでしょう。

事実、ゲーム音楽を演奏する音楽集団はいくつかありますが、実機に即したという意味では

このNES BAND以外に存在を個人的には知りません。他にもあったらぜひ教えてください。


というわけで、往年のファミコンファンであれば、おそらく感激するであろうNES BAND。

また、このバンドは遊び心も多分に持ち合わせており、例えば以下のスーパーマリオ3の

演奏動画では、通常のステージ音楽の他に絵合わせの音や、クリア後のハンマーブロスが

マップをうろつく効果音まで再現してしまったりしているのです。



どうしても、実機と比べると手が追いつかずにテンポが遅れることもあるのですが

それもまた味の一つであることは間違いなく、個人的には新たな動画がアップロードされる度に

動画を見に行ってしまうほどのお気に入りのバンドです。

往年のファミコンファンならチェックして損はないバンドですのでぜひ。


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